UFO DIG-UP! UFO手帖8.0 感想と紹介 その1

UFO手帖8.0が文学フリマ東京にて刊行されました!


今回のテーマは「UFO DIG-UP!」
掘り出しものを探しに行こう!

表紙:「サンダウンのピエロ」または「すべての色のサム」、が描かれたレコードジャケットです。
楽し気にマイクを握っているサムが素敵です。
また、背景には虚々実々のレコードジャケットが並んでいるところにも注目です。ああ、教授、幸宏さん……(涙)。

□特集 UFO DIG-UP!

「UFOを掘る」……またも刺激的なフレーズです。
「オカルトをほじくれ!!」とは『Spファイル』(『UFO手帖』の前身)のキャッチコピーだったわけですが、さて、
「掘る」とは?
単純に「くぼみを作る」というだけではなく、「埋もれていたものを取り出す」という意味合いから、忘れられた事柄に再び光を当てるというシーンでも用いられ、また、「深掘り」という単語と紐づいて、深く調査、考察するというイメージと結びつき、果ては何らかの性的なイメージにまでつながります。

UFO手帖8.0、これらの用法・イメージ全部入りで構成されています。
さあ、UFO DIG-UP!

□サンダウンのピエロ by 秋月朗芳さん
イギリスの小さな島で
少年と少女が出会った
すべての色のサム

実際、事件の通りの文章なんだけど、なんてリリカルなフレーズなんだ。

サンダウンのピエロ・すべての色のサムです。このイラストでみると物凄くデザイン性の高い造形なのだと思わされます。
書籍『イラストで見るGhost』では「世界の幽霊たち」のコーナーにいたな(正体不明と書かれていた)……。
そう、彼はGhostではなく、またサムという名前でもないのだ。

1973年、ワイト島のサンダウンで2人の少年少女が出会った奇妙な人物。それはマイクを握って不気味な"泣き声"を出す、身長2mの、ピエロのようにも見える人物だった……。
50mも離れているのにまるで耳元でささやくように聞こえる声で語りかけ、しゃべれることは明白なのに自己紹介を
「私はすべての色のサムです」と自前のノートに大きな文字で書いてみせる、何かがちぐはぐな印象の怪人。
彼(?)の住まう「窓のない金属の小屋」がまるでUFOのように思えることから英国の老舗UFO研究団体Buforaの冊子に掲載され、世界に知られることとなったのです。

イギリス5月の午後4:00といえばまだまだ明るく(日没は午後8時以降)、何かを見間違えやすい時間帯とも思えず、また、7歳の子供の妄想とするには妙なリアリティが感じられます。
「すべての色のサムです」と自己紹介しながら「自分には名前がない」と語り、また自らを人間ではなくオバケでもない、奇妙な存在と説明し、
じゃあ実際のところ何なのと問われたら「わかるでしょ」と返す……不思議なユーモアのようでもあり、また、哲学的なやり取りのようでもあります。
エミルシン事件や、MIBとの共通性にも言及があり、このあたりにも強い掘り下げ感を感じます。

●SHORT DIG UP!
小ネタ的な感じのコーナーです。コミック雑誌の1/4スペースみたいな感じでこういうの大好き。

〇フェイラ・デ・サンタナ事件
飛行物体の墜落―大停電―搭乗員(複数の種族)との遭遇そして……!!
ダイナミックな大事件があっさりと幕切れを迎えているあたりがいかにも南米らしくてとても良いです。

〇かわいいやつ
・箱かわいい
少年が目撃した奇妙な箱状物体。点目がかわいい。
第一印象はテトリスの「Jテトリミノ」。

□伊豆事件 byザクレスホビーさん
忘れられた
日本のハイストレンジネス遭遇事件を
掘り返す

ザクレスホビーさん作成の、頭の尖った宇宙人フィギアが目を引きます。
1979年伊豆の中華料理店で発生した接近遭遇事件。
裏庭に着陸したUFO、屋内で目撃された身長1mで頭頂部の尖った人物、謎の音声と妖精のような空飛ぶ人影。
何と言ってもUFO着陸痕の土中から飛び出す謎の鳥、ここにハイストレンジネスが顕現しています。
だが、本当に不可解なのはここからで、この事件を取り扱った『UFOと宇宙』『木曜スペシャル』そして伊豆新聞それぞれの内容が大きく異なっているのです。
真相を確かめるべく資料を調べつくし、果ては現地にまで飛ぶザクレスホビーさん。
当時を知るであろう近隣の人々への聞き込みから浮かび上がるものとは……。
この、「何が起きたかはわからないけど何かが起きていたことは確実だ」感はハイストレンジでありながら真実味も感じさせる要因だと思っています。

□世界の介良事件 by秋月朗芳さん
木立の中で浮遊する円盤状の物体の写真、木との対比からずいぶん小さな円盤だと思われます。確かに見たことがある写真です。
というわけで小型UFOにまつわる3事件の紹介。

・スオネンヨキ事件
フィンランドは雪深い2月に発生した事件。過去に巨大なゼリー状の物体に襲われた(?)経験を持つヤルモさんがUFO探偵として活躍する様が興味深いです。
雪に抉られた穴の中に「酢の匂いがする液体」「金属片」「カップ」があったというあたりは魔術っぽい感じもする事件です。

・スオムッサルミ事件
1967年、ソビエト(当時)との国境近くにあるフィンランドの町スオムッサルミで目撃された直径80cmの円盤。アンテナと舵状のパーツがあり、電撃機能(?)を持つらしい。
周囲に気流が発生していたとの記述があるので、超初期のドローンだったのかも……?

・マニーモア事件
北アイルランドで発生した、直径18インチの小型円盤遭遇事件。蹴り倒され、羽交い絞めにされ、這う這うの体で逃げていく円盤が少し可哀そうに思われます。

●SHORT DIG UP!
〇これは本物のUFOレポートであり、宇宙のホラーストーリーではない
脳のような本体(円錐形の何かが中から突き出しています)からトンボのような脚が生えている、なんだか正気度が下がりそうなイラストが載っています。
ゲーム『バロック』に出てきた"神経塔"を思い出したり。

□ソビエト列車番号1702事件 byオオタケンさん
タイトルが格好良いです(情報そのまんまなのだろうけど)。
トラクタービームで列車を引っ張ったかと思うと斥力ビームで運転士を運転席に押し込んだり、と何らかの意図を持った干渉をしてくるUFOが不気味です。運転していた2名以外にも駅員がこのUFOを目撃しており、信憑性は高いのではないでしょうか。
列車が動くUFO事件というと中国貴州省の空中怪車事件を思い出します。こっちは工場内にある無人の列車が坂道を上ったという話ですが。
https://chkai.info/air_strange_event

●SHORT DIG UP!
〇半分UFO
UFOが半分だけ写った躍動感あふれる一枚。撮影側の状況が滲み出ています。

□豚のような鼻UFOがトナカイを誘拐!! by比嘉光太郎さん
鼻UFO……!UFOにあたらしいカテゴリーが登場しました。
赤と白の模様がまるで豚の鼻のように思えるパラシュート状の物体がヘラジカの群れに襲いかかる!
ちょっと『NOPE』を思い出します。
MUFONによる考察も入っていて実に興味深い記事です。

〇かわいいやつ
・棒で道路を掘っててかわいい
頭の大きい、身長1mくらいの4人組。両手を挙げたポーズは西川魯介先生が描くところの「納戸婆(押入れ婆)」のようでもあります。「ホーッ」とか言いそう。

□UFOでDIE! byオオタケンさん
DIE!死んでしまうのデスね。

失踪からたった2日でやせ衰え、恐怖の表情を張り付けた死体となってしまったトッド・ジェフリー・シーズさんのケース。一番怪しいのは警察の対応。
石炭の山の上で死体となって発見されたジグムント・アダムスキーさんのケースは犯罪色が濃厚。UFOの関与が疑われたのはひょっとしてお名前のせい?
ラヴェット軍曹のケースはまんまヒューマン・ミューティレーション。UFOから触手が伸びてきて中に引きずり込まれるという典型的なホラーシーンが恐ろしい。
リバリーノ・マフラさんのケース(リバリーノ事件)は有名ではありますが、改めて読んでみますと宇宙人絡みというよりは民話的恐怖と理不尽さを感じます。
続くジョアン・プレステス・フィリオさんのケースは残虐UFO事件の多発するブラジルでも屈指の恐ろしさ!スティーブン・キングの『痩せゆく男』の最も恐ろしい一節を思い出します。文中の"Boitata"とは火の玉のことで、民間伝承によれば白熱する大蛇なのだそうです。
トラッカーズ・ワイフ事件……なんとも気の毒な事件ですが、一切の真相は不明。あまりに悲しい結果だけが残ります。

〇かわいいやつ
・フライングかわいい
空から降りてくる身長1mのヒューマノイド。てっぺんが光るヘルメットや手に持った円盤状の物体(これで飛行するのかも)などディティールに凝った印象があります。

□UFOでSEX! byオオタケンさん
死に続いては性の話題。性と死を見つめるUFO手帖。果たしてこれは現代の異類婚姻譚なのか?

・ホセ・イナシオ・アルバロさんの場合
文中に出てくるアントニオ・ビラス・ボアスさんとは1957年ブラジルで発生したアブダクション事件の被害者です。
ホセさんのケースは、UFO目撃、空白の時間、逆行催眠による記憶の復活という黄金パターンであるものの、女性型宇宙人との性交というセンセーショナルな一点で揶揄の対象となってしまっているように思えます。
しかし、こういった謎の女性との恋愛めいた話は少なくないのではないか。新耳袋にも、その家に代々現れる女性の幽霊の話があったし。

・孟照国さんの場合
頭部に衝撃を受け意識不明と診断された状態で、彼の意識は肉体を離れ、身長3mの宇宙人女性と……。
夢とも現実ともつかない、かつ恐怖とも快楽ともいえる体験をした彼が、この事件により日常世界での幸福を得られたなら、それはきっと不幸な出自の異星人にとっても良かったことなのではないでしょうか。

・サイモン・パークスさんの場合
幼少期からいろんなタイプの宇宙人と交流があったという彼は、当然宇宙人(キャットクイーン!)との性交渉についても語っており、子供まで作ったとのこと。こういう話を聞くと必ず『スーパーマンの子孫存続に関する考察』(ラリー・ニーヴン)を思い出してしまう私はもはや老害なのだろうか(スーパーマンが地球人との間に子孫を作ろうとするのであればそこら辺の麦とでもヤッた方がまし、というような一説がありました)。

・パメラ・ストーンブルックさんの場合
銀河系の歌姫!なんと格好良い。日本での8年間の音楽活動もあるのに、かなり情報が少ないのは残念なところ。
仙道の世界では、瞑想中に性的な誘いを仕掛けてくる存在には徹底して無視することがセオリーのようだけど(誘いに乗ると危ないらしい)、パメラさんのケースでは無事だった模様(無事?)。

・ステファニー・フェイ・コーエンさんの場合
ステファニーさんのケースも精神世界の出来事の模様。割と多いケースなのだろうか。あと、イギリスにおける「キャットピープル」の扱いが妙に性的な扱いを受けているように感じられるのはいったい何故。

UFO、宇宙人絡みでなくとも、古来からインキュバス、サキュバスの類の話は枚挙にいとまがないのですが、そのような存在が生み出された背景まで考慮し、真摯にまとめた良記事です。

□X博士の怪UFO事件 by花田英次郎さん
フランスの医師X博士が体験したUFOとの遭遇事件。それによって博士の傷(戦争による古傷から3日前の大けがまで)が癒えてしまう。だが影響はそこにとどまらず、なぜか博士の周辺に怪異が発生するようになってしまう……。親子でシンクロする三角形のアザ、ポルターガイスト、空中浮揚(D.D.ヒュームばりに天井に接触してしまう!)、謎の人物のたび重なる訪問(ミイラみたいな人を連れてくることもある)……。なんだかUFO事件というよりは、『黒衣伝説』で扱われそうなホラー展開です。
この現象を起こしている存在が、好意で行っているのかそれともちょっかいをかけているだけなのか、皆目見当がつかないところがいかにも超常現象なわけですが、なんとなく、「おれスゲーんだぞ!」とアピールしようとして逆効果になっている思春期前の少年のような感じもするのです。

□「X博士の怪UFO事件」に関する関連図書 by有江富夫さん
X博士の怪UFO事件に関する記事が載っている書籍が紹介されています。『UFOと宇宙』は最早当然として、英語、仏語の海外書籍から男性雑誌まで網羅されています。しかも目次にない記事まで…!

□ソビエト異次元UFOウェーブ by秋月朗芳さん
あのヴォロネジ事件は単体の一事件ではなく、複数の事件が連なるUFOウェイブだった!
しかも全ての事件がことごとくハイストレンジネス。
・燃え盛り空を飛ぶ巨大な棺桶!
・直径5mのキノコ型物体!
・湖面に立つ謎の棒状物体(光線による攻撃機能付き)!
・落下したボール状物体が人型にトランスフォーム(胸部に光る玉がある)!しかも合計5体!現れた謎の女性も不可解な振舞いを!
・女性の顔が表面に浮かび上がっている直系5mの球体!
あまりのハイストレンジネスに「!」ばっかりになってしまった。
しかもこれらの事件が5か月余りの間に集中して発生しているということから、何かが起こっていたことは間違いないのではないかと思わせられます。

〇かわいいやつ
・けむくじゃらかわいい
モモちゃん登場!腐敗臭とオレンジ色に輝く眼が特徴。イラストだけだとギリースーツを着た人の様でもあります。

・つぶらな瞳のオジサンかわいい
悲しそうな顔をした、穏やかで優しい雰囲気の宇宙人。ムーミン谷にいそうな風貌です。

□エチオピアの火の玉事件 by花田英次郎さん
1970年アフリカはエチオピアのUFO事件。轟音と高熱を発する球体。溶ける道路、破壊されていく民家、しかもこの球体はUターンして戻ってくる!と事件内容はスペクタクル。報告をしてきたのは国連からエチオピアに派遣された医師。報告を受けたのはあのアレン・ハイネック!
報告内容の真偽は不明ながら、独立戦争真っただ中ということもあり、なにかひどい事件が起きたのだろうとは思われます。
ただ、ネットでもめぼしい情報にたどり着けず、ハイネック絡みのわりには地味な、隠れた事件という印象です。

〇かわいいやつ
・ロボットかわいい
可愛い!高橋留美子の描く忍者"一目丸(いちめまる)"に似ている。
ヘリコプターの乗組員による目撃から始まり、5日後別の場所で複数人に目撃されていたりするあたり信憑性を感じます。