UFO手帖7.0が文学フリマ東京にて刊行されました!
今回の特集はフォーティアンであります。
〇表紙 by 窪田まみさん
なんて素敵な表紙!
天から射す光に沿って、フォートとカエルが降ってくる。
天から射す光に沿って、フォートとカエルが降ってくる。
イラストタイトルは
『帰ってきたフォート』
『帰ってきたフォート』
どこか不敵で、かつ飄々とフォートが帰ってきます。
誰の元へ、何のために。
誰の元へ、何のために。
答えは全てこの一冊の中に。
〇帯
そして帯!
そして帯!
1秒先が見通せない世界に
蛙の雨が降る「自由」を
蛙の雨が降る「自由」を
シビれます。
そして裏表紙側には
1秒先が見通せない世界で
UFOという「贅沢」を
UFOという「贅沢」を
新たな名フレーズの誕生です。
〇特集 フォーティアンでいこう!
超常現象を表わす「フォーティアン現象」という言葉があります。
その元となったのがチャールズ・ホイ・フォートという男。
しかし、その名は広く知られていてもどんな人生を送ったどんな男なのか、あまり知られていないのではないでしょうか(私は知りませんでした)。
UFO、UMA、超能力……。我々を惹きつけて離さない奇現象にその名を冠された男に、UFO手帖が迫ります。
しかし、その名は広く知られていてもどんな人生を送ったどんな男なのか、あまり知られていないのではないでしょうか(私は知りませんでした)。
UFO、UMA、超能力……。我々を惹きつけて離さない奇現象にその名を冠された男に、UFO手帖が迫ります。
One Measures Fort, Beginning Anywhere.
――どこからはじめてもフォート――
帯にも書かれた象徴的な言葉、そして写実的なカエルのイラスト。
個人的にはたいへんお世話になっているオライリーの技術書を思い出させるページから特集が始まります。
個人的にはたいへんお世話になっているオライリーの技術書を思い出させるページから特集が始まります。
さあ、フォーティアンでいこう!
□円を測る by馬場秀和さん
「円はどこから測っても円である」
フォートの謎めいた言葉に、正方形と内接円という図形を使ってアプローチします。
フォートの謎めいた言葉に、正方形と内接円という図形を使ってアプローチします。
正方形:我々の世界、ユニヴァース
内接円:他界、オルトヴァース
ほぼ共有する領域を持たないこの二世界、ただ4箇所の接点によってのみ交錯しています。
オルトヴァースの大きさ、中心を、接点で観測される奇現象から測ろうとしたのがフォートの手法である、と解説されます。
そして、そもそもユニヴァースは整然とした正方形ではなくオルトヴァースを内包したものであるとする現代の解釈にお話は移っていきます……。
フォーティアンは今も奇現象をもってしか測れない”円”を測地し続けているのです。
□はじめてのフォート by秋月朗芳さん
フォートって誰だ?そしてフォーティアンってなんだ?
一冊も邦訳書が出ていない点からも推測される通り、フォートという人物の情報は直接集めるのは結構たいへんなのです。
その苦労を一身に背負い、技術力と努力でアプローチする労作です。
一冊も邦訳書が出ていない点からも推測される通り、フォートという人物の情報は直接集めるのは結構たいへんなのです。
その苦労を一身に背負い、技術力と努力でアプローチする労作です。
-「フォーティアンの掟」
・どんな現象も容認する
・どんな現象も完全には信じない
・どんな現象も完全な説明が必要であるとしない
・どんな現象も容認する
・どんな現象も完全には信じない
・どんな現象も完全な説明が必要であるとしない
ボンヤリとした「フォーティアン」という存在に、フォートという人物の軸をあてはめてアプローチしています。
この掟、かくありたいとは思うものの実践するのは実にたいへんそう……。
-チャールズ・フォート、そしてアンナ
そもそもフォートとはどんな人物なのでしょう。
裕福な家庭に生まれながらも決して幸せではない幼少期、リアルな冒険に身を投じた時期を経て、寝たきりの隣人からの「1つの生き方に集中すべき」という言葉に感じ入り、幼馴染と結婚し、
裕福な家庭に生まれながらも決して幸せではない幼少期、リアルな冒険に身を投じた時期を経て、寝たきりの隣人からの「1つの生き方に集中すべき」という言葉に感じ入り、幼馴染と結婚し、
その後莫大な遺産を得て、図書館で奇現象情報を収集しまくって執筆に勤しむ……
いや、ちょっと待って、なにこのラノベ主人公的展開。
このご都合主義とも言われてしまいそうなくらいの環境にフォートが置かれていたという事実については
【コラム】「エラー・レポート」で記述されています。
本当に、この世界のバグ出しをやってもらうために人を選出し、専念できるための環境を提供したと取られても不思議ではない状況だと思います。
でもちゃんと環境を整えてくれるあたり、地球制作プロジェクトは誠実ではないか、我が身を振り返るとそんな感想しか浮かばないのでありました。
あと、メモや著作を燃やす(Burn)するのはやめて……。ドキュメント大事。
このご都合主義とも言われてしまいそうなくらいの環境にフォートが置かれていたという事実については
【コラム】「エラー・レポート」で記述されています。
本当に、この世界のバグ出しをやってもらうために人を選出し、専念できるための環境を提供したと取られても不思議ではない状況だと思います。
でもちゃんと環境を整えてくれるあたり、地球制作プロジェクトは誠実ではないか、我が身を振り返るとそんな感想しか浮かばないのでありました。
あと、メモや著作を燃やす(Burn)するのはやめて……。ドキュメント大事。
-フォートの4冊
邦訳が1冊もない、しかもコリン・ウィルソンに酷評された文体で書かれたフォートの著作を、技術と努力で読み解き、紹介されています。
・The Book of the Damned:『呪われた者の書』
ファフロツキーズ現象、シンクロニシティ、ポルターガイスト、UMA……、そしてUFO。
超常現象をテーマにした最初の本と言われているそうですが、最初でこの網羅率というのが驚愕です。
UFOなんて、ケネス・アーノルド事件の30年ほども前だというのに!
ファフロツキーズ現象、シンクロニシティ、ポルターガイスト、UMA……、そしてUFO。
超常現象をテーマにした最初の本と言われているそうですが、最初でこの網羅率というのが驚愕です。
UFOなんて、ケネス・アーノルド事件の30年ほども前だというのに!
・New Lands:『新しい大地』
主に異常な天文学的事象、蜃気楼、天空の怪光(UFOだ!)などを扱っている著作。
霊的存在からではなく、「宇宙からこの地球を訪れた存在や物体」についてこの時代に言及しているというのはすごいことだと思います。
主に異常な天文学的事象、蜃気楼、天空の怪光(UFOだ!)などを扱っている著作。
霊的存在からではなく、「宇宙からこの地球を訪れた存在や物体」についてこの時代に言及しているというのはすごいことだと思います。
・Lo!:『見よ!』
「テレポーテーション」という語はフォートの造語なのですね。このテレポーテーション仮説を使って異常現象の説明にあたります。
アレキサンダー・キングによる素敵なイラストレーションについてのコラムもあります。
「テレポーテーション」という語はフォートの造語なのですね。このテレポーテーション仮説を使って異常現象の説明にあたります。
アレキサンダー・キングによる素敵なイラストレーションについてのコラムもあります。
・Wild Talents:『野生の才能』
「おはよう犬」の話に心臓を鷲掴みにされます。なんだかんだ言ってもこういう話、実は好きなんじゃんフォート。
「おはよう犬」の話に心臓を鷲掴みにされます。なんだかんだ言ってもこういう話、実は好きなんじゃんフォート。
□アズ・フォーティアン・ワールド by 稲生平太郎さん
英国の雑誌『フォーティアン・タイムズ』の日本通信員だった稲生平太郎氏の玉稿5本が掲載です!
-欧米における悪魔的児童虐待は現代版”魔女狩り裁判”か⁉
-英国を震撼させた「幽霊(ファントム)ソーシャル・ワーカー」事件の怪
-「穿孔(せんこう)」すれば高次の意識状態を獲得できる⁉
-ネス湖の怪獣は毛深いラクダだった⁉
-宇宙人による誘拐事件(アブダクション)は単なる幻想ではなく現実の体験だ⁉
-英国を震撼させた「幽霊(ファントム)ソーシャル・ワーカー」事件の怪
-「穿孔(せんこう)」すれば高次の意識状態を獲得できる⁉
-ネス湖の怪獣は毛深いラクダだった⁉
-宇宙人による誘拐事件(アブダクション)は単なる幻想ではなく現実の体験だ⁉
□フォーティアン・コンテンツ・ガイド
-ノンフィクション
・『超常現象の謎に挑む』 解説by ペンパル募集さん
この度の特集のために古書で入手しました。
手に取ってみてびっくり、記事にも書かれている通り、超大判、超重量です!
書見台の購入を真剣に考えました。
この度の特集のために古書で入手しました。
手に取ってみてびっくり、記事にも書かれている通り、超大判、超重量です!
書見台の購入を真剣に考えました。
網羅性の高さもさることながら、図や写真が多く見ているだけでも楽しい一冊です。
置き場所を考える必要はあるけれど(あと書見台)。
置き場所を考える必要はあるけれど(あと書見台)。
・フェノメナ―怪奇現象博物館 解説by ペンパル募集さん
「空洞の世界」「蛙のどしゃ降り」「妖精の矢じり」……魅惑的なワードと癖のある文章で読者を幻惑する一冊で、まさに「フォートに近い視点で、大量のフォーティアン現象がまとめられている本」。
文中でも紹介されている通り、巻末に斉藤守弘氏の論稿がある点も見逃せません(『フェノメナ―怪奇現象博物館』に記載されたのと同様の現象が日本でも起きている、として数々の事例を挙げています)。
「空洞の世界」「蛙のどしゃ降り」「妖精の矢じり」……魅惑的なワードと癖のある文章で読者を幻惑する一冊で、まさに「フォートに近い視点で、大量のフォーティアン現象がまとめられている本」。
文中でも紹介されている通り、巻末に斉藤守弘氏の論稿がある点も見逃せません(『フェノメナ―怪奇現象博物館』に記載されたのと同様の現象が日本でも起きている、として数々の事例を挙げています)。
また、この本は前号UFO手帖6.0の「超常読本へのいざない」のコーナーでも紹介されています。
・ボーダーランド 解説by ペンパル募集さん
天空から垂れ下がる一本の糸、そしてそれは8月の間じゅうずっと見ることができた……。
境界領域からもたらされるこのような奇現象を取りまとめ、また、物理、歴史、文化的な解釈を施している名著。
一生に一度とは言わず何度でもこのボーダーランドに足を踏み入れたいと思う私のようなものはすでにこの「糸」に絡めとられているのでしょう。
・世界奇現象大百科 解説by ものぐさ太郎αさん
いかにも「ムー別冊」な表紙が心地よいのですが、何と言ってもフォートの著作からの引用が今回の特集で取り上げられた要因となります。一冊も邦訳がなされていないフォートの、しかも名言揃いな引用集。
「異星人たちが、我々より進んだテクノロジーを有していれば、地球上にその姿を投影することは可能だろう」と19世紀に述べているのは驚愕ですね。この言葉はどんな文脈で語られたものなのでしょうか。
いかにも「ムー別冊」な表紙が心地よいのですが、何と言ってもフォートの著作からの引用が今回の特集で取り上げられた要因となります。一冊も邦訳がなされていないフォートの、しかも名言揃いな引用集。
「異星人たちが、我々より進んだテクノロジーを有していれば、地球上にその姿を投影することは可能だろう」と19世紀に述べているのは驚愕ですね。この言葉はどんな文脈で語られたものなのでしょうか。
・【コラム】黒沼健・庄司浅水の著書にあるフォートの記述 by 有江富夫さん
フォートは日本の超常現象・奇現象研究家の著作にも(当然ながら)よく登場しているようです。
そして何より怪奇現象研究家として後世の人々を勇気づけていた模様です。
-フィクション
・小説『見えない生物バイトン』解説by ペンパル募集さん
この紹介文は素晴らしすぎて非才の我が身には感想を語ることができません。
是非、『UFO手帳7.0』でお読みいただきたい。
この紹介文は素晴らしすぎて非才の我が身には感想を語ることができません。
是非、『UFO手帳7.0』でお読みいただきたい。
みんなバイトンのせいなのです。
・映画『マグノリア』解説by ペンパル募集さん
カエル降り、壮大なカエル降りこそがこの映画のコア、求心力の源なのでありましょう。カエル降りといえばフォート。文中ではこの映画のフォーティアン度がいかに高いかが解説されています。そして最後にはヌルヌルでヌメヌメな感触を味わうことができるのです。
カエル降り、壮大なカエル降りこそがこの映画のコア、求心力の源なのでありましょう。カエル降りといえばフォート。文中ではこの映画のフォーティアン度がいかに高いかが解説されています。そして最後にはヌルヌルでヌメヌメな感触を味わうことができるのです。
・映画『炎の少女チャーリー』 解説by ペンパル募集さん
ファイアージーニアス、火炎魔人、パイロキネシス……超能力による発火という現象にまつわるワードはどうしてこんなに魅力的なのか。
だからこそこの邦題はちょっと、と思ってしまうのです(そこは「ファイアースターター」だろう!と言いたくなる)。映画としては結構原作に忠実な作りだったような記憶があります(主人公の服装とか)。
騒霊現象と少女の関係を扱った話では岡本綺堂が書いてたはず……。
・映画『The Whisperer in Darkness』 解説by ペンパル募集さん
これはカナザワ映画祭上映作品でもありますね。
”Mr.Fort”が話しているシーンが予告編で見られます(Youtubeにあり)。
これはカナザワ映画祭上映作品でもありますね。
”Mr.Fort”が話しているシーンが予告編で見られます(Youtubeにあり)。
・コミック『Fort:Prophet of the Unexplained!』 解説by ペンパル募集さん
「フォートがインディ・ジョーンズ張りに活躍する冒険活劇」!ラヴクラフトも参戦!
「フォートがインディ・ジョーンズ張りに活躍する冒険活劇」!ラヴクラフトも参戦!
Amazonの紹介文(英語)を機械翻訳すると以下のようになります。
-----------
見よ!説明のつかない強力な預言者が、真実を探し出し、人類の道を照らすために現れました!
19 世紀の終わり、ニューヨークの街は奇妙な出来事に悩まされていました。空から魚が落ちてきたり、夜の奇妙な光があったり、微生物の粘液の奇妙なコレクションがあったり、消えたりしている市民がいるのです。
これらの謎の背後にある真実を暴くのは、一人の男、チャールズ・フォートにかかっています!
フォートは、日中は温和な司書であり、夜は大胆不敵な捜査官であり、真実を探し出し、奇怪な事件を明るみに出します!
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見よ!説明のつかない強力な預言者が、真実を探し出し、人類の道を照らすために現れました!
19 世紀の終わり、ニューヨークの街は奇妙な出来事に悩まされていました。空から魚が落ちてきたり、夜の奇妙な光があったり、微生物の粘液の奇妙なコレクションがあったり、消えたりしている市民がいるのです。
これらの謎の背後にある真実を暴くのは、一人の男、チャールズ・フォートにかかっています!
フォートは、日中は温和な司書であり、夜は大胆不敵な捜査官であり、真実を探し出し、奇怪な事件を明るみに出します!
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映画化は頓挫したのでしょうか。ならばアニメ化してほしい。
・小説『果しなき流れの果に』 解説by 馬場秀和さん
小松左京の壮大なSFとして有名なこの作品は、実は本格フォーティアン小説だった!オーパーツ、人体自然発火、人間消失、そしてテレポート(題材は藤代バイパス車両失踪事件ですと!)という奇現象のオンパレードだけでなく、フォーティアン現象の本質は”外”(オルトヴァースだ!)からの干渉であるとする考え方はまさにフォート的。
ああ、早いところフォーティアン現象研究に国家予算がつぎ込まれるような時代にならないものだろうか(アーネンエルベ的なものではない方向で)。
・映画『ゼイリブ』 解説by 馬場秀和さん
ジョン・カーペンター監督の傑作。ただ、私の脳裏にはコミック『宇宙家族 カールビンソン』(あさりよしとお著)のパロディネタがよぎるのですが(サングラスをかける、かけないで殴り合うシーン)。
誰も気づかないうちに人々は支配・洗脳され、いいようにこき使われている、という点がフォート的とされるのですが、あれ、だとすると眉村卓の『幻影の構成』(1966)もあてはまる、かも?
『ゼイリブ』では洗脳刺激を見破る装置がサングラスだったのですが、『幻影の構成』では洗脳装置が出てきます(「イミジェックス」という名称なのですがこれがスマホそっくり)。
文中ではこの、「ゼイリブプロット」に着目し、同じプロットを扱った作品として『マトリックス』を筆頭に数々の映画が挙げられています。
ジョン・カーペンター監督の傑作。ただ、私の脳裏にはコミック『宇宙家族 カールビンソン』(あさりよしとお著)のパロディネタがよぎるのですが(サングラスをかける、かけないで殴り合うシーン)。
誰も気づかないうちに人々は支配・洗脳され、いいようにこき使われている、という点がフォート的とされるのですが、あれ、だとすると眉村卓の『幻影の構成』(1966)もあてはまる、かも?
『ゼイリブ』では洗脳刺激を見破る装置がサングラスだったのですが、『幻影の構成』では洗脳装置が出てきます(「イミジェックス」という名称なのですがこれがスマホそっくり)。
文中ではこの、「ゼイリブプロット」に着目し、同じプロットを扱った作品として『マトリックス』を筆頭に数々の映画が挙げられています。
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以上、特集「フォーティアンでいこう!」感想と紹介でした。
――続きます。