UFO手帖6.0刊行されました! その感想と紹介 その3(了)


UFO手帖6.0を感想を交えつつ紹介するこのブログ、時間は空いてしまいましたがようやく完了です。
驚くべきことにこのUFO手帖6.0、巻末に向けてますます密度が上がっていくのです。

■古書探訪 by 中根ユウサクさん
第6回は『心靈の秘庫を開きて―欧米心靈研究界の近状―』 著者は高梨純一氏であります。
日本の空飛ぶ円盤研究の草分けである氏は、円盤本の前に心霊本を上梓していたのだった。

内容の見出しだけでも面白そう。
「米国の靈馬レデイワンダー」とは人の考えを読むというテレパス馬だったか。
「英文学の雄ハツクスレーの心霊研究観」とはLSDで有名なティモシー・リアリーの理論的主柱となった『知覚の扉』の著者ハクスリーの話だろう。

また、リーダーズ・ダイジェスト誌が頻出という点も興味深い。有江富夫さんの図書目録にこの雑誌が載っていたので、印象に残っているのだった。この雑誌は小学校の図書室で見かけた記憶があるので、教師が読むようなお固い本だと思っていたのだが、結構、UFOの話題を扱っているのだな(あなたの超常現象体験を募集!みたいな特集も組んでいたとも聞く)。

何といっても、「我々の人生観・宇宙観を一変させるような」モノを追い求めるという姿勢に惹かれます。

■ちびっこUFO手帖 by 中根ソウスケさん
今どきの小学生が考える「うちゅうじんのしょうたい」とは?

ソウスケさん絵が上手いなあ。ウイルスもコロナ型とT2ファージ型の2パターンを出してくるし、ファージがマイクロブラックホールを通過してタイムトラベルする(同時に何か新しい物に変化している)様子がよくわかります。
あと、甲府事件の宇宙人がかわいい。

■超常読本へのいざない by 馬場秀和さん
第7回は『古代竜と円盤人』(F・W・ホリデイ)と『フェノメナ 幻象博物館』(J・ミッチェル、R・リカード)の2冊です。
「宇宙人遭遇事件が起きているのは本当だが、宇宙人は地球には来ていない。それは『現象』なのだ」とする立場から書かれた2冊が紹介されます。

・『古代竜と円盤人』
ネッシーを丹念に追い求めるところから始まります。本人自ら調査を行い、目撃者から直接聞き取りをし、自ら謎の生物目撃までしているとのお話。
しかし、ネッシーの謎を真摯に追っていくと、奇妙な事実が浮かび上がってきます。

-ネス湖やアイルランドの湖沼は大型動物を生息させるほどの生物資源を持たない(しかし、怪獣は現に出現している)。
-ネッシーは、ごく狭い「カメラの死角」に出現する(目撃されても写せない)。
-やっと撮影できても行方不明になるフィルム。
などなど……。

自分が相手にしているのは、未知の動物などではなく、全く別の「真に異常な現象」なのではないか……。
「ネッシーという動物」という解釈の方がよっぽど常識的ということになってしまう、という点が興味深いのですが、我々はよく似たものを知っています。
多くの人や動物に目撃され、レーダーやエコーに痕跡を残すくせに決して実体を補足されることはない存在。
そう、UFO現象です。

ここから空飛ぶ円盤とドラゴンの同根説に発展していく超展開。ちゃんとM.I.B(の役割を果たす人)も登場します。
まっとうな研究者がオカルト観の波にはまっていく過程、という点では恐ろしい話でもあります。
まじめな研究者が超常現象的なものを対象にした場合、オカルト側に振れるケースと、立場を一転させて過剰なまでに超常現象を否定するケースに分かれるような印象があります(大槻教授だって最初は"火の玉"を物理的に解明したいというだけのスタンスだったはず)。
どちらが正しいというような話でもないのでしょうが、当初の、科学的にその対象を追求し続ける、という姿勢が保てなくなる何かがありそうなのが最も怖い点なのかもしれません。

・『フェノメナ 幻象博物館』
目撃されても科学的証明を得られない存在、それを「幻象界における実在」と呼び、幻象界は物質次元と心理次元の中間に位置するという「幻象論」を主張します。
幻象界から物質界に一時的に落ちた影、それが超常現象で目撃されるものであり、その認知には目撃者の心理が大きく影響する、といのが幻象論の考えの様です。

「人間には原理的に捉えることができない真の世界=リアルをヒトが理解するにはそのようなフィクションが必要だ。」(『だれの息子でもない』神林長平)

という一節を思い出しました。
正気を保つためにも、きっと物語は有効なのでしょう。

■穴うさぎとかっぱちゃんのイラスト by 窪田まみさん
雨上がりの草原にほのぼのとした光景が広がります(何かが空にいるけれど)。
ただ、外には雪が残るこの時期に見ますと、3人とも寒くないの、と声をかけたくなる感じになります。

■乗り物とUFO by ものぐさ太郎αさん
第6回はロズウェルの全翼機です。
おお、オーロラ事件が載っている。幽霊飛行船墜落事例だが、未知の金属や象形文字が発見されたというお話。
この話の白眉は搭乗者である宇宙人のお墓。なんとなく、宇宙人をキリスト教式に葬った、と言いたかったのが主目的だったような気がする。

記事にあるリフティングボディ機M2-F2、その墜落シーンが『600万ドルの男』で使われているという件、調べてみるとパイロットが一命をとりとめたのは奇跡だったと思われるようなひどい事故だった模様。
なお、その前身のM2-F1は「フライング・バスタブ」の愛称通り、ずんぐりした機体が可愛らしいのだが、現在「フライング・バスタブ」で検索すると、ドローンっぽく4つのローターを付けた浴槽で有人飛行をする、という「本物の」フライング・バスタブばかりヒットしてしまい「それじゃないんだよ」という気にはなる。

ロズウェルUFOのプラモデル、などというものが製品化されている(しかも、後に別会社から再販までされている)とは驚きだ。
そして記事は、秋月編集長からもたらされた1947年7月5日ニューメキシコ州ソコロ南部(ロズウェル事件の舞台の一つ!)で目撃された未確認航空機のイラストについて言及していきます……。

ロズウェル事件は決して風化しない。手を変え品を変え、何度でもよみがえってくるのです。

■正装した男女の脇に立つ怪しい女性のイラスト by 窪田まみさん
新婚夫婦の脇に立つ女性は物理的に存在しているのでしょうか。それとも……。
怖い一枚です。

■UFOバカ一代 とフラモンさん by めなぞ~る♪さん
空手バカ一代アニメ版主人公ケン・アスカが宇宙人に逃げられたり、UFOを真っ二つにしたり、アブダクション(?)されたりと大活躍です。

■イーグルリバーのパンケーキ by 太田 健さん
読者の皆様からの評判もすこぶる良いこの記事、いや実に面白い!モノづくり系の話はメカであれ料理であれ大好物なのですが、中でも本作は絶品です。

シモントンさんが持っている、失敗して焦げたクレープみたいな"パンケーキ"。実に美味しくなさそうな印象を長年抱いてきましたが、まさかそれを再現しようというお人が現れるとは。しかもミルミキサーの購入、豆から皮をはぐなど手間のかかる作業、といったいろいろ意味でのコストの投入。出来上がったものに「表面に穴が空かなかった」として厳しい自己評点。もはや職人の域に到達しているような。

そして話をここで終わらせず、シモントンのパンケーキがフランス語圏で一般的なソバを使ったパンケーキ"プロイ"ではないかという仮説を立て、さらにそこからシモントン事件の真相に迫っていく。
最終的に美味しいガレットが焼きあがり、しかもそこに"ダンボール風味が足りない"ことを悔やむあたり真に職人魂を感じさせる、実に良作であります。

UFOと食べ物、というテーマを思いついたり。"UFOを落として焼いて食べちゃった"というネタもありますので(もちろんカップ焼きそばの話ではなく)。

■有明海UFOの現地調査 by 相良つつじさん
永尾剱神社(えいのおつるぎじんじゃ)。不知火の観望所であり、また、"神様がエイに乗り、空を飛んできた"という伝説があることからもUFOの気配が濃厚なのですが、神社にUFO写真が奉納されているという点も驚きです。そして「龍体状の円盤」というワードに心が震えます。

神社や付近の人々に聞き取りもされていて、不知火が点滅、変形しながら空を飛ぶ様子が語られていて、この現象についての科学的な分析も興味深い。しかし、聞き取られたもう一つの現象「山の方へ飛ぶ不知火」については謎が残る……。この「山の方」には鬼の岩屋古墳群がある点もまたロマンをかき立てます。

そして記事の最後には『UFO手帖』編集部からの追加情報が……!これまた驚きの発見ですので是非本誌でのご確認を。

■アズ・フォーティアン・ワールド by 稲生平太郎さん
稲生平太郎(横山茂雄)先生が『Az』誌に無署名で連載されていた「アズ・フォーティアン・ワールド」、その最初の3回が再録されています。

・怪獣の実在をめぐる民俗学と未確認動物学のホットな論争
・アララット山に眠るノアの箱舟”発見”狂騒曲
 いったい箱舟は何艘発見されるのか!?
・現代イギリスに頻発する”謎の大猫(エイリアン・ビッグ・キャット)”事件

ありがたいことに冒頭には再録のための解説文が新たに書き下ろされています。

■UFOプラモの世界 by 羽仁 礼さん
アダムスキー型UFOのプラモデルってそんなに種類があったんだ。
箱絵も気になります。あ、右下の箱絵はムーンライダーズの岡田徹のアルバム『BEYOND THE BOX』(CTO LAB.)のジャケット絵と同じだ。

やはりアダムスキー型UFOの正体は石油ランプの傘なのでしょうか……。

■新編・日本初期UFO雑誌総目録(1947-1979)第2回 by 有江富夫さん
毎回膨大な情報量を誇るこのコーナー、すさまじい労力に頭が下がります。

朝日新聞社から出ていた子供用『バンビ・ブック』に「空飛ぶ円盤なんでも号」なんてあったのか。手塚治虫や星新一といったメンツ以外にも古川緑波、野尻抱影といった路線の異なる著名人が名を連ねているのが興味深い。
『ラジオ技術』『測候時報』『大法輪』などなかなかUFOを取り扱いそうにない雑誌まで網羅されているのが凄まじいです。
記事末には「貝塚事件とその真偽論争」「『地軸は傾く』騒動」の解説が載っています。不勉強な私にはたいへんありがたいのです。

■バックナンバー
「Spファイル友の会」はなんと今年で16周年!

■編集後記――NEVER MIND THE BOLLOCKS,He's John keel by 秋月朗芳さん
編集長による、キール愛にあふれた編集後記です。キールはPUNKだ!
キール・ノット・デッド。
キール・フォー・キング。
巻を重ねるごとにボリュームも熱量も増していくUFO手帖。6.0も充実の読みごたえであります。

読もう、UFO手帖!