UFO手帖3.0―宇宙<そら>から来ないUFO 刊行記念 その6(完)―UFOと乗り物と機関と帰らざる人と俳句と


長々と書き連ねてまいりましたが、『UFO手帖3.0』紹介&感想は今回で区切りでございます。

・乗り物とUFOのコーナー

第3回はUFOとUAV。
未確認飛行物体にも流行り廃りがある、ということで、取り上げられるのは2007年から流行り始めた「ストレンジ・クラフト」です。
確かにネット上で見た時期がある。「ドーナツ型を中心にアンテナ状の物が左右非対称に伸びたカタチ」の、人などが乗る場所がないように見える物体が空に浮いている写真。
そういうわけで今回は搭乗員がいない、ドローンやUAVと呼ばれる既知の飛行物体とストレンジ・クラフトとの関係を考察しています。
「1860年代には既にフランスでド・ラ・ランデルとダメクールが、二重反転ローターの無人蒸気ヘリコプターを作っている」
なんと、蒸気ヘリコプター、しかも二重反転ローター!こんなに心躍るモノを知らされたらジュール・ヴェルヌだって作品に登場させざるを得ないだろう。

そして動力系の話から話題は「リフター」へ。
この三角形のリフターの動画は見たなあ。同じものが「シュタインズ・ゲート」でも扱われていたし。
「そういえば、ロズウェル事件で回収された落下物の材質は、どこかリフターを構成する材質に似ている。」
リフターがロズウェル事件とも関わりを持っているとは知らなかった。

グラビティー・キャパシター(重力保存装置)に関する話では、その発祥となる事件の記述、
「アルミホイルとパラフィン紙でできた装置をT 型フォードのイグニッション・コイルに接続すると、装置は即座に猛スピードで浮かび上がり、納屋の屋根に煙を立てる穴を1 つ残して消え去った

これって古典スペオペ「宇宙のスカイラーク」の冒頭を思わせる…(スカイラークだと溶液に浸けた銅線が飛んで行き、壁に穴を開ける)。
あと、最近イオノクラフト実用化へ一歩前進的な記事を最近目にしたので、イオン風関連の動向はしばらく注目したいところ。

「斥力構体」…粟岳さんの作品には水がらみの異星人話も多いような印象があり、その点でも今号のテーマと整合性を感じていたがもしかしたら水着がらみということだったかもしれない。

・ブルーブックもつらいよのコーナー

第3回はルッペルト ライトパターソン慕情。
ルッペルトさんはプロジェクト・ブルーブックの初代機関長です。
東方向に移動する飛行物体を天体と結論付けたり、アダムスキーが会った宇宙人の靴底イラストが関係ない目撃事件の項にファイルされていたりと、謎なのか杜撰なのかよくわからない状況からスタートします。

ヤカン型UFOというのも珍しいが、「木の葉落とし」の動きで上昇していく(!)物体というのは興味深い。木の葉上がり。

占領下の日本における目撃事例も扱っているんだ。鳥取県美保航空基地の「ゆるい角度で上昇する白い物体」はたいへんに興味深い(たしかに場所柄もあって一反木綿説も否定できないかと)が、レポートの文書の随所に埋め込まれた「PD、BRAVO、DELTA、ALPHA」などの文字という話も気にかかる。
一見するとフォネティックコードが混じっているようだけれど(「PD」はわからないが…)、文章内にフォネティックコードをそのまま記述するというのも奇妙な話だ。何かの符牒なのだろうか。

・夏休みこどもフラモン電話相談のコーナー

一部の方には「くさいやつ」と呼ばれているフラモンさんですが、今回はなぜあの時臭かったのかの秘密が明かされます。
ナイフを入れるときの擬音が「クサッ」となっていたり…。
「アダムスキーみたいな人たち」島村ゆにさんへのアンサー漫画にもなっています。

・読書感想文『ノー・リターン』を読んで

1959年に発生した、「ジェリー・アーウィン事件」。アメリカ陸軍兵であるジェリー・アーウィンが輝く物体の墜落(?)に遭遇した後、不可解な行動をとるようになり、最終的には失踪してしまうという事件なのだが、はっきりとUFOも出てこない、アブダクションともつかない、しかし確実に何かが一兵士の身の上に起きたことをうかがわせるという事件である。

ポイントとなるのはこの不可解な行動の内容で、状況をあわせると以下のようになる。
・意識不明の状態で発見されたアーウィンは「茂みの上の上着」を気にするうわごとを繰り返していた。
・上着の上にコートを着用していたのに、発見時にはコートを着て上着だけなくなっている状況だった。
・意識を取り戻した後も、記憶障害、意識障害が頻発するようになった。
・退院後すぐ「あの場所へ戻らねば」という衝動に駆られ、無断外出の後「現場」で上着を発見、メモを焼却する。
・その後再入院などを経て再び失踪。以降の行方は杳として知れず…。

というのがあらましなのだが、このもやもやとした事件を半世紀以上たった現在、調査しなおした結果が『ノー・リターン』(デヴィッド・ブーハー著 2017年)である。

いやあ、面白い!
不可解な行動、場所の矛盾、物証(ここでは上着が重要なアイテム)まで揃ってしまい、それこそエイリアンによる干渉でも持ち出さないことには説明がつけられないような状況が展開される。果たして真相は…。

職業ライターや調査機関の人間ではない在野の一愛好家が紐解く半世紀前の事件。これは読んでみたいなあ。

・新編・日本初期UFO図書総目録(1975-1979)のコーナー

いや、このリストを眺めているだけで読書欲、購買欲がつのって来るのです。
種村季弘の『薔薇十字の魔法』とかあるんだ、空中魔術ですと?
つけられている一言コメントがまた興味をそそり…。
芥川也寸志のオカルト話とか。

・テオ・ヤンセンのUFO

ヤンセン好き。以前、ヤンセン展で動くストランド・ビーストを間近に見られたのは良かった。
このUFOがヤンセンを有名にするきっかけになるとは。

・空飛ぶカメ事件

浦島太郎のカメとはやはりUFOの符牒…!
水辺近くで目撃というのもでき過ぎ感。

・金星人捏造未遂事件(勝手に命名)

絵に似ているからというだけで金星人に仕立て上げられそうになった女性、回避できて何よりです。

・表紙

今回の表紙はシンプルなイメージ…と思いきや、そこに展開される世界はこれまでで一番の複雑さを持っているのです。
特に気に入っているのは「地底から来たポーズ」のところ。
何かのメッセージの様でもあり、でももしかしたら何も言っていないのかもしれない。
全てが「unidentified」。

・特別寄稿
(実は稲生平太郎氏であり横山茂雄氏である)濱口腎虚氏の手になる珠玉の一稿
『新興宗教俳句の頃』
一見真面目な文章を隠れ蓑になにやらとんでもないことを企んでいるご様子!
これはもう実際に読んでくださいとおすすめするほか面白さを伝えるすべを知りません。
読もう!『UFO手帖』!!