「UFO手帖2.0」感想 その3

引き続き感想を述べて参ります。

「UFOと小説」のコーナー
今回取り上げられているのは「美しい星」。今年映画化もされた話題の作品である。

私は三島由紀夫とはあまり接点がなく、これまでに読んだのは短編集「真夏の死」くらいだろうか(「ゴーティエ風の物語」と銘打たれた「翼」を読むためだった)。あと「午後の曳航」(猫を殺すような奴は遠からず人を殺すようになるので早々に高く吊るすべきですよという教訓話。もちろん誤読であります)があったか。

それらの読書からずいぶん後に、「三島由紀夫が書いた『宇宙人が出てくる小説』がある」と耳にし、「?」となる。
数少ない私の読書経験からすると、三島由紀夫にはSF臭がまったくしなかったからだ(オカルト臭はしていた)。
多少気になりながらも積極的に読もうと思わなかったのは、皆が
「宇宙人が出てくる小説」
という言い方をしながらも、誰も
「SF小説」
とは言わなかったあたりがひっかかっていたように思う。

そして今回「UFO手帖2.0」で初めてその内容に触れたわけだけれども、このコーナーそのものがSF感にあふれていた。
小説内で起こる出来事につき、日時、場所を特定して行き、その現象が実際は何であったか、背景にあるのはどの事件で、それにどういう意味合いを持たせているのか、などを推測していく(実際にその場所まで行ってみることまでされている)。

読書にまつわるこういう行動は楽しい。昔自分でやったのはもっと労力の小さい、関係図やキャラクタシートを作ったり、所感、推測を書き込んでいくようなものだったけれど。最近はアニメやゲームでやることがある(理解が追いつかなくなってきたから)。

三島由紀夫が日本空飛ぶ円盤研究会に所属していたことは後年知るようになったのだが、SFやオカルトの趣向を持つ純文学作家(それも超大作家)などという位置づけだけでももはや超常的な存在と言っても良いのではないだろうか。

「古書探訪」のコーナー
李家正文著「降る話」について。

「降る話」というタイトルが素敵な、魚や蛙など普段降らない物が降ってくる「ファフロツキーズ現象」についても取り上げている昭和9年刊行の本の紹介。

「ファフロツキーズ現象」という言葉は少し前に覚えたはずなのだがすっかり忘れてしまっていた。

こういう、いろいろな知識をちりばめた書物は何というジャンルなのだろうか。
事典ではないし、エッセイでもないだろうし…。しかし私はこういう本が大好物であるのだ。
降る物としての「雨」の解説に、東西の伝説から科学技術(ここでは人工降雨)まで縦横に話題を振り撒く。
こういう話が語れる人に、私はなりたかったのではないだろうか。

李家さんのトイレ研究本って入手可能なのだろうか…。

あった。このページの下方ご参照。

「超常読本へのいざない」のコーナー
中尾麻伊香著 「核の誘惑 ―戦前日本の科学文化と『原子力ユートピア』の出現」について。

サブタイトルにある「原子力ユートピア」という語が恐ろしい。
だがこの語を見たときに真っ先に脳裏に浮かんだのは海野十三だった(何かお気楽なイメージとともに)。ちゃんと本書内でも海野は取り扱われているようです。

「『体に良い放射線』などという概念があるのは日本だけ」とマンガに描いていたのはあさりよしとお氏だっただろうか(マンガでそんなネタを扱う人が他にそうそういるとも思えないけれど)。
しかしどうして日本人がそんなことを言うようになったかについては考えたことがなかった。
この本はその答えを示してくれるようだ。

太平洋戦争中の日本の核兵器開発については秘密裡に進められていたような印象を持っていたが、逆に「原爆待望論」が巻き起こっていたとは知らなかった。

このテーマの小説だと、辻真先の「マッドボーイ」シリーズがあったなあ(その中では日本軍の原爆開発は秘密裡だったようだけど)。
辻真先はお気楽バカ小説のふりをして妙なエッジを立てた話をぶつけてくるから油断がならない。

「体に良い放射線」説の勢いは一時期ほどではないのだろうが、現在は「放射線は体に悪くない。そんなことを言うやつは放射脳だ。」的言説として、さらに強く、身近になっているように思われる。

続きますよ。

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