温度、湿度の計測、状態を示すLEDのチェック、異音はしないか、異臭はないか(機械内部の加熱などにより異臭が発生することがある)など、チェックリストに沿って各サーバをチェックしていく。
普段なら全て「異常なし」で終了、何か発生していれば「○○番サーバで□□障害発生」などと発報することになる。
…のだが。
先日、ラック下段のサーバをチェックするためにしゃがんだところで、人の声が聞こえた。
ぎょっとしてサーバ周りを調べるも、人影は見当たらず。念のためサーバルーム全体をチェックし直したが結果は変わらなかった。
本日のチェック担当は私一人、厳重なセキュリティがかかったサーバルームに人が迷い込むというのもそうそうない話であろう。
これは、念願の怪奇現象?と結論に飛びつくのは待つことにして、現場となったサーバ前に移動し、先ほどと同じくらいの高さに頭を下げてみる。
と、聞こえるのだ、サーバファンの騒音に混じって人が何かを言っている様な音が。
男性の声のようで、何を言っているかはわかりそうでわからないくらいの不明瞭さである。
頭をその位置からずらすともうファンの音しか聞こえない。
サーバの排気音がまるで人の声のように聞こえるポイントがあるのだ。
おお、これは興味深い。
早速、ノイズと幻聴について調べてみることにした。
すぐに見つかるのは、感覚剥奪(遮断)による幻覚のケースだ。外部からの刺激がなくなると、人間は疲労してしまい、挙句、勝手に刺激を作り出す(=幻覚)というもの。
目隠しとホワイトノイズを使って、SRI(大作戦ではなくスタンフォード大学に実在する方ね)が超能力開発実験を行った…なんて話がムーブックスにあったなあ。
他に多く見つかったものとしては、「幻聴を発生させないためにホワイトノイズを使う」というもの。
有名なオリヴァー・サックス氏の著書にもホワイトノイズ発生器を使って音楽幻聴を抑えていた人のケースが載っている。
ただ、音楽幻聴とはいろいろな音程の音が聞こえてしまう耳鳴りの一種であるそうなので、精神的なものに起因する幻聴とは異なると思われる。
そのものズバリ、「ホワイトノイズを使って死者と交信する技術」というものがあることを初めて知った。電子音声現象、EVPと呼ばれるそうだ。
なんとこんな大ネタを見逃していたとは不覚であった。
あまり詳しい実験方法はまだ調べていないのだが、ホワイトノイズの中から意味を持った人の声を拾い出す、という方法をとるらしい。
―それってホワイトノイズで感覚剥奪されてしまったが故の幻聴では?などと安易な結論に飛びつくのは非科学的な態度であるため、自重することにする。
現在までのところでは、短い時間でホワイトノイズが人の声に聞こえるというケースは見つけられなかった。
ビーチコーミングの人の記述で、夜中の海岸で大勢の人の声を聞くことがある、という話にたいへん興味をひかれているのだが、波の音もホワイトノイズなのだな。