急減速

帰路の電車ではなるべく座らないようにしている。座ればほぼ確実に寝過ごすからだ。目覚めた時見知らぬ終着駅にいる自分を発見するのは嫌だ。
電車内で立っていると、加速・減速の荒さがよくわかる。発車で急加速、駅近くで急減速というのは
「下手だな、新人かな」
と思うくらいですむのだが、それまでスムーズに走っていたのが突然の急減速などされると、事故でもあったかと心配になる。
ただでさえ短い睡眠時間がいよいよ短縮されてしまうではないか。
不思議なことに、特定の時間の特定の場所だけで起きる急減速、というのがある。
以前使っていた路線で、終電少し前の便に乗ると、かなりの高確率である地点で急減速するのだ。駅の近くでもなく、カーブがあるわけでもない。
別の時間の便では経験したことがないし、その急減速の直後のほかの乗客を観察すると驚いていたり、顔を見合わせていたり、たまには
「何、今のブレーキ」とかいう言葉も聞こえるので、一般的な感覚としても異常な減速であるらしい。
いったい何だったのだろう?
特定の運転士が、その地点あたりに住む誰かに向けて合図を送っていた、とか。
坂口尚のコミックに、宇宙飛行士が帰還時に、地上で見上げているであろう妻に向けて3度の減速噴射を行って合図を送る、という話があったなあ。