梅と毒薬

好きな食べ物は?という問いには物心ついた頃から一貫して「梅」と答えている。永谷園のお茶漬けでは梅茶漬けが一番好きで、駄菓子では梅仁丹モドキが好きだった。梅仁丹モドキには梅成分は無いように思うけど(本物の梅仁丹には梅が入っている)。幼児の頃こっそり梅干の瓶を開け、思う存分むさぼった挙句に吐いたこともあるくらい梅好きである。

青梅は食用にされない。それは、人が食べるとシアン化合物(通称「青酸」)中毒になる危険性があるとされているからだ。梅の実に直接毒性の強い青酸が入っているというわけではなく、青酸配糖体と呼ばれる成分が含まれており、梅の実に含まれる酵素や胃酸と反応して青酸が発生することがある、と言われている。特に若い梅の実には青酸配糖体が多く含まれるため、より注意が必要である。
青酸中毒の反応の一つに嘔吐、というのがあるので、昔私が吐いたのも、まだ漬かりきっていない梅干を、大量に、幼児が口にしたせいであったのではないかと考えられる。
学研の「忍術・手品のひみつ」には、忍者が梅から毒薬を作っていたという記述が載っていたように記憶している。

そういえば梅干の種を噛み割って、中の胚(「仁」とも呼ばれる)まで好んで食べていたっけ。胚にも青酸配糖体が多く含まれるらしいので、「梅の実食うとも核食うな」などとも言われているらしい。きちんと漬かっていて既に分解されていたのだろう、幸い無事である。
レストランで食後のデザートに出てきたムースが梅の胚の味がして驚いたことがある。杏仁とは異なる味だったのだが、何のムースだったのだろう?