その後、ジュブナイルSFを読み漁るようになり、当然眉村卓作品も手に取り、そこで「ああ、謎の転校生の人か」と気づくのだった。
小学校中学年にも読めるジュブナイルの作品数が多いこともあるが、やはりこの人の書く世界が好きだったのだろう、手に入る限りの眉村作品を読み漁ったものだ。
ジュブナイルでは、主人公は平凡だけど少しアッパーなクラスの少年であることが多い。自分専用の部屋を持ち、真面目で学業は優秀、スポーツだって決して苦手ではない良くできた子なのであるが、それまでのジュブナイルの主人公には多くないタイプのように思える。おそらく勉強は苦手だがやんちゃな主人公、の方が共感を呼びやすくまた活躍させやすいという向きが多いためだろう。だが、私は眉村卓世界の主人公の方に憧れと共感とを覚えるのだった。
優等生タイプではあるけれど自分でものを考え行動することのできる、そしてちゃんと悩み苦しむ主人公。こういうタイプがいきいきと動きまわる眉村ワールドを私は好きだった。
少し長じて「EXPO'87」や「重力地獄」「産業士官候補生」などの作品に触れ、これまた惚れ込んだのだが、「産業士官格好良い!」という誤った読み取り方をしているのであまり良い読者ではないに違いない。
少年ドラマシリーズを始め映像化されることも多い眉村作品だが、異色の出来というべき「時空の旅人」については項を改めて述べさせていただきたい。あの作品は原作とは随分おもむきの異なったものになってはいるが、私は心底傑作だと思っているのだ。
…大林版の「ねらわれた学園」は別の意味でケッサクだったと言わざるを得ない。お腹に巨大な眼を描いた人物が「私は神だー!」と叫ぶような商業映画を私は他に知らない。初めて見たときは(それも劇場で)頭を抱えたけどさ。