その中には忘却曲線や、睡眠を用いた効率的な記憶の方法も記述されていたのだ。能力開発と聞けば頭に「超」の字が付こうと付くまいと血道を上げるのは昔からの私の特性である。早速試してみたところ、面白いように覚えられる。円周率、寿限無、百人一首などなど。おおよそ無意味な記憶対象は一遍は頭に入れてみた。後で思い返してみて、このときにモールス符号を入れておかなかったことが悔やまれる。子供脳ではなくなってしまっていたので語呂合わせで全部入れたよ。お陰で聞き取りが遅い遅い。
何でこのご時勢にモールス符号を覚えたかって?もちろん無意味だからです。
だが、思い返してみても、暗記に使ったのは全て文字情報なのだった。読んで覚えたり唱えて覚えたり、左脳しか使っていない。人の顔や、図形的なもの(地図とか)になると全く訓練したことが無く、今でも覚えるのが苦手だ。思うに、この時に訓練しなかったから今苦手なのではなく、当時から既に苦手だったから訓練しなかったのだろう。苦手を克服するより長所を伸ばすことに執着する子供でしたからなあ。
地図はともかく、人の顔が覚えられないのは結構困る。今でこそ写真付の名刺やfacebookといった便利なツールの使用は普通なのだが、そのようなハイテクがなかった時代、名刺の裏にその人の特徴や発言や心の中でそっと付けた「あだ名」をメモしておくことで切り抜けるしかなかったのだ。それで覚えられることもあれば、上司に「ちょっと○○さんの名刺コピーさせて」と言われて青くなったりすることもあった。
ことほど左様に人様の顔が記憶できない私だったが、不思議なことに2次元の人の顔は簡単に覚えられるのだった。コミックでもアニメでも。顔なのに。
フィギア系はどうだ。3次元だが覚えられるだろうか。試してみた。うむ、全く問題なく覚えられる。
では実在の人を2次元化したもの、写真はどうだろうか。駄目だ、覚えられない。
いかん、これではただの社会不適合者のようだ。
似顔絵ならどうだ。おお、これなら覚えられる。
ということは、一度誰かに特徴を拾い上げてもらえば、記憶することが出来そうだ。
さらに言うと私の脳は現実の顔から特徴をピックアップすることが苦手だということなのだな。こういう機能は昨今の人工知能でささっとやってくれそうな気がするがどうだろうか。と思ったらもういろいろ出ているようだ。これで私も人の顔が覚えられる…のだろうか。