忘れていた。職場の健康診断で眼底検査に異常あり、との所見があったのだった。
忙しさにかまけて放置しているうちに本当に忘れてしまっていた。
疑われる病名は「老人性黄斑変性」。嫌な病名だな。別名を「加齢黄斑変性」というらしいがおんなじだ、嫌さ加減が。
というわけで、眼科に予約をとって精密検査を受けに行くことになった。
予約の際に、「瞳孔を開く薬を使いますので、その後5時間くらい影響が出ます。車の運転などはしないようにして下さい」との注意事項があった。
おお、そういう目薬があると聞いてはいたが、それを我が身で試せるというのは興味深い。
薬の点眼を受ける。30分ほどで瞳孔が開ききるので、そこで眼底の撮影を行うとのこと。
その間、もらった資料などを読んで過ごすが、左目が見えづらくなって来たのに気づく。
まず、まぶしい。最初はそれほどでもなかったが、どんどんまぶしさが強くなっていく。待合室の天井の明かりが強すぎるように感じる。
あと近くが見え辛くなってきた。
ということは一種の筋弛緩剤なのか。瞳孔を収縮させる筋肉を弛緩させると同時にチン帯も弛緩するので近くが見えない、老眼のような状態になる、のか?
だが。30分ほどして瞳孔のチェックをしたところ、
「まだ縮瞳が起きるので再点眼しますね。」
とのこと。こんなにまぶしいのにまだ効きが甘いというのか。
というわけで完全に瞳孔が開ききったようで、眼底撮影が無事できたのだった。
しかし、この状態でのフラッシュ撮影はキツイ…。
順調に検査を終えて、外に出る。うわぁ、まぶしい。
道路の白線が光る。捨ててあるゴミ袋(白)も光っている。
光っていると思って視線を向けるとそれほど光っていない。目をそらすとやっぱりまぶしい。
これは光を感じる捍体細胞が視野周辺にあるからだな。知識としてはあってもここまで強く実感するケースはまれだ。
これは確かに車の運転とかできないな。
「瀕死の探偵」でシャーロック・ホームズが病気を装うためベラドンナを眼にさすという描写があったが、調べてみたところ、ベラドンナには瞳孔を開く効果があるらしい。
ホームズは仮病と気づかれない&後に「ガス燈の火を大きくする」という合図を送るため、部屋を暗くしていたというが、本当のところ、まぶしいのが嫌だったということもあるのではないだろうか。
帰ってきて自宅で鏡を見ると、確かに左目だけ瞳孔が開いている。ハイライトが消えた死んだ目のようになっている。何か怖い。
これであたりが暗ければ瞳孔散大がメリットになるのに!
というわけで瞳孔散大が活かせる場所に向かう。
そう考えて、この日を選んで目の検査を行ったのだ。
これから東京国立博物館へ向かう。
本日のお題は「不思議なマネーを探す旅」。
暗いトーハクでこそ、この眼が役に立つのではあるまいか?!
では、行ってきます。