日本は湿度の高い気候風土であるが、そんな中で暮らしていると、他の環境に触れた際に戸惑うことになる。
例えば、砂漠にしつらえたプールに入ると、水から出た瞬間凍えるほどの寒さを覚えるそうだ。気化熱の作用である。気温は50℃近くあったとしても体が震えるほどなのだという。ちなみにこの環境下で水かけっこをすると、相手に届く前に水が蒸発するとのこと。
諸星大二郎著「巨人譚」にあった、「雨は地上に届く前に全て蒸発する」というのはこういう所で発生するのだな、と思う。
乾燥の激しい土地では、テーブル上に置かれた冷えた飲み物のグラスに結露はしない。イラストや漫画で砂漠気候の土地を描くときは注意が必要なようだ。
昔読んだ話に、砂漠に素焼きの水がめを置いておくと気化熱でガンガン冷えていく、というシーンがあったが、なるほどそういうこともあるだろう。早く飲んでしまったほうが良いとは思うが。
砂漠では真夏でも猫を撫でていると静電気が発生する。
理屈ではわかるのだがこれは衝撃的だ。猫様を撫でていてパチパチという音がすると今年もそういう季節がやってきたかと毎年感慨に浸る私としては、年中パチパチしながら撫でなくてはならないというのは感覚的に想像ができない。猫様には嫌がられるし。
幽霊の出現には空気中の水分―湿気が関係するという説がある(トム・レスブリッジなど)。では、砂漠地帯では幽霊の目撃談は少ないのだろうか。調べてみると、18、19世紀のヨーロッパ人がアラブ世界を旅行した際の記述では、「幽霊の概念は存在しない」とされているものがあるそうだ。ただ、旅行記そのものが少なく、さらに幽霊に関する記述となると殆ど無いくらいらしいのでこれが一般的な解なのかどうかは不明である。また、宗教的要素、文化的要素も考える必要があり、一概に湿度との関係を指摘できるものでもないはずだ。
ただ、社会人類学者の清水芳見教授によると、エジプト社会では、非業の死を遂げた者が生者の前に現れるという話を聞いたことがある人、またそういった現象を信じる人の割合は高いという調査結果があるという。研究者や大学生など比較的高学歴のグループを対象に行った調査で、実際に幽霊を見たと答えた人が5.1%いて、知人から幽霊目撃談を聞いたことがあると答えた人は71.6%いたという結果が出ているそうだ。
屋外での目撃談もあるようなので、これは、湿度と幽霊出現の関係は一義的なものではないかもしれない。
たいへん興味深いので、もっと調べてみることにする。